NATOが東欧へ増派という報道が出ました。外交官の追放や、大使館員の帰国指令などどんどん状況はひっ迫してきました。その後結局ロシアが軍事侵攻しました。
(これは過去記事を再掲したものです)
NATOとロシア、対立エスカレーション
NATOとロシアの対立がエスカレート。ロシアとしては目と鼻の先でもあるウクライナのNATO入りは絶対受け入れられません。 一方NATO側は、NATO入りの希望はその国が決めるべき問題であり、干渉は受け入れられません。 一時的な休戦や、非武装地域の設定などでいったん収まってくれるといいのですが、まだまだ予断を許しません。
通常、戦争の予兆としてよく起きる出来事として、「外交官追放」「大使館への避難勧告」などがあるのですが、これらはすでに行われています。非常に緊張は高まっています。
プーチンはなぜ強気?
プーチンが強気な理由はシンプル、かついくつもあるので怖いです。
まずオイル価格が戻ってきたことで、資源大国ロシアとしては財政的に潤いつつあることが挙げられます。 メルケル・トランプといった強いリーダーが不在なことも大きいでしょう。メルケルさんが退任したため、EUのリーダーシップに不安が残ることもあります。西ヨーロッパはエネルギー危機に陥っており、ロシアにはエネルギーという強いカードがあります。
アメリカの場合は、米中冷戦にも対応しないといけないため、ロシアと両面作戦をこなすのは厳しいでしょう。ましては司令塔のバイデンは高齢も心配です。副大統領のカマラハリスもかなり不人気です。
日本への影響は?
ロシアがウクライナに電撃進攻した場合、ウクライナはまだNATOに加盟しているわけではないことからすぐNATOとロシアの全面戦争になるとは必ずしも言えません。
アメリカはかなり強い経済制裁をすると予告しており、西側はウクライナ軍を後ろから?支援する程度になるでしょう。
ただロシアは天然ガスや石油の輸出シェアは大きいです。それが経済制裁の対象となるということを考えれば、天然ガスや石油の価格がさらに高騰することが考えられます。 アメリカは日本向けのLNGなどを欧州へ送るということになれば、日本に入ってくるエネルギー資源が減るかもしれず、そうなれば価格高を加速させる要因となるかもしれません。
エネルギー価格には明らかに影響しそうですから、灯油をタンク買いしている人は早めにチャージしておいたほうがいいかもしれませんね。
ロシアとNATO、武力衝突になったら?
軍力比較
まずそれぞれの軍事力を確認しておきましょう。 NATOはアイスランド、アメリカ合衆国、イタリア、英国、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブなど30か国参加しています。 ただ規模でいえばアメリカが断トツですので、アメリカとロシア軍とで比較します。
兵力
アメリカ 現役140万人、予備85万人 ロシア 現役100万人、予備200万人
陸軍
アメリカ 戦車6000台 ロシア 戦車12000台(優位)
空軍
アメリカ 戦闘機トータル13000台(優位) ロシア 戦闘機トータル5500台
海軍
アメリカ 船舶トータル460隻 空母20(空母では優位) ロシア 船舶トータル660隻 空母1 通常兵力では、空母や空軍力でアメリカに軍配があげられます。 ただし米国も他地域へのにらみをきかすためにも全勢力をいっきに投入とはいかないのが実情でしょう。 参考:端数等省略 USA vs Russia | Comparison military strength (armedforces.eu)
核兵器
アメリカ トータル5600 ロシア トータル6257 NATO加盟国では、フランスが290、イギリスが225も所有。アメリカ単体ではロシアより少ないですが、NATOとロシアの保有数でみなせばほぼ互角といってよいでしょう。 Status of World Nuclear Forces – Federation Of American Scientists (fas.org)
全面衝突の場合は?
普通に考えれば、最後はどちらも核を撃ち合います。両者あわせて1万発の核を撃ち合いますから、多くの土地は破壊され、放射能汚染も続きます。 それだけでなく核兵器使用での粉塵が舞い上がり、長く冬が続き、食料不足でその他多くの地域も壊滅的な影響が出ます。 シミュレーションによると、核弾頭全発でなくても核の冬が訪れるレベルにはなるそうです。 apicodes.hatenablog.com
別シナリオとしては、例えばサイバー攻撃などで片方がもう片方の核兵器を実は無力化させることに成功してから、核兵器攻撃をしかけます。 この場合でも、大量の放射能や気候変化によって栄華は長く続かないものと思われます。
侵攻シナリオ
シナリオ1 直前で迂回(X)
双方にらみ合いのうえ膠着。現状先延ばしとしていったん双方撤退となります。 この場合、遺恨はのこりますので、いつまた問題がぶり返すとも限りません。
シナリオ2 クリミア方式(X)
クリミアの時と同様、ロシア軍は後方支援のふりをしながら実質キャスティングボードを握るというパターンです。 例えばウクライナ国内で暴動が起き、自治自衛組織を名乗る団体(実はほぼロシア軍)がウクライナの一部を占拠・支配。 あくまで軍事侵攻ではないという名目で、ロシアの支配地域が拡大するというシナリオです。 他にも「ウクライナ東部のアンモニア工場で事故」「発電所ののっとり」など、いろんな口実が挙げられています。 ロシアの「ウクライナ侵攻」いつ、どう始まるのか | The New York Times | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
シナリオ3 世界同時軍事侵攻(X)
ウクライナだけの話にとどまらず、世界的に混乱するパターンです。 ウクライナ進攻と同時に、北朝鮮は核実験を再開。中台では衝突がおこり、中東でハルマゲドンがおきるなど、各地で一斉に騒乱が爆発。 アメリカはウクライナへのフルコミットは難しいうえ、高齢のバイデンさんが倒れカマラハリスが急遽ヘッドとなり、アメリカの内政も大混乱するというパターンです。 世界的にカオスとなり、世界経済もずたずたになっていくかもしれません。核兵器全面戦争の次に怖いシナリオかもしれません。
シナリオ4 ベラルーシ軍が侵攻(X)
ロシア研究の第一人者中村さんによると、オリンピック終了後2/20にロシアではなくベラルーシがウクライナに侵攻するという可能性を紹介しています。ベラルーシ軍といっても、シベリアからの屈強なロシア兵士が紛れ込んでいたりするかもしれません。 www.youtube.com 進攻によってウクライナ経由のパイプは閉鎖になるでしょうが、そうなればベラルーシ経由のパイプの価値が非常に高まることになります。
シナリオ5 ヨーロッパ混乱でロシア勝利(X)
ウクライナの侵攻と同時にサイバー攻撃などの複数の手段で欧米へ圧力をかけるというシナリオです。 まずはヨーロッパへのエネルギー供給を全面停止。さらにサイバー攻撃でヨーロッパ中の自然エネルギー発電所がダウン。エネルギー兵糧攻めともいうべき攻撃でヨーロッパ本体は混乱の渦中となります。 米国はロシア関連の金融資産は全凍結を発表。ヨーロッパへのエネルギー全面支援を進めます。 その米国もサイバー攻撃で発電所や交通・航空インフラは障害発生。さらに米国の複数企業がランサム攻撃によってデータが暗号化でのっとられ、機能不全となります。ロシア企業が米国企業にしてきた経緯を見ればあり得るシナリオといえるでしょう。 混乱は続き、NATO側がロシアに大幅に譲歩したかたちでいったん休戦となります。
シナリオ6 ロシアの軍事進攻(いまここ)
双方実力行使し、内戦状態となります。 ロシアとしてもウクライナ全土を一気に完全制覇というのは大変でしょうから、親NATO地域、親ロシア地域と分断されてくるかもしれません。 ニュースウィークでは、 ・部隊は撤退。支援は継続。 ・ウクライナ東部に部隊駐留 ・ウクライナ東部を占領 ・全面占領 など6つのシナリオを掲載。進行する場合、どこの領域まで圧倒するかが焦点となります。 ロシアのウクライナ侵攻6つのシナリオ|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
シナリオ7 ロシアでクーデター(?)
交渉は膠着状態となり長引きます。 西側は経済制裁を実施し、ロシア国内でも不満が高まります。 結果、クーデターが勃発。ロシアが内部から崩壊するというシナリオです。
シナリオ8 原発事故で永久に非武装中立化(?)
高橋洋一さんらが指摘しているシナリオ。 原発を乗っ取ったうえ大事故発生。放射能汚染で、結果的にウクライナの非武装中立化が達成されてしまうというもの。
シナリオ9 世界は完全ブロック化に(?)
西側とそれ以外とで完全にブロック化。 貿易は固定され、ネットも寸断される世界が今後長く続きます。 中国、インド、ブラジルの出方がどうなるか興味深いところです。
シナリオ10 NATOも参戦し泥沼化(?)
バイデン政権は化学兵器の使用について警告。 非人道的行為へ対し、何らかの平和維持活動と称する軍事行動を開始するというもの。